「なるほど、アン王女か」
からりと笑う声に「え?」と顔を上げると、彼はおどけたように凛々しい眉を持ち上げた。
「『ローマの休日』って映画、知らない?」
「……名前だけ。おばあさまが好きだった映画だわ。どんな内容なの?」
亡くなった祖母の部屋のコレクション棚を思い出しながら尋ねると、モッズコートの人は「そうだなぁ」と腕を組んで首をひねる仕草をした。
「自分の置かれた境遇に嫌気がさした王女様が、自由を求めてこっそり寝所を抜け出して、偶然出会った男とデートを楽しむ話?」
いたずらっぽい顔で言った彼の説明が正しいのかどうかはわからないけれど、あまりに強引にまとめていて、少しだけ笑ってしまう。

