「それじゃあ、あの人は困ってる私に声をかけてくれた、親切な人だったのね」
「いや、それはどうかな……」
もう一度道の向こうを見やってから、彼は少しだけ皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「お城から逃げ出してきたんですか? お姫様」
私は自分の格好を見下ろした。
レースの真っ赤なワンピースドレスに肩からポシェットをかけた姿は、緑豊かなこの場所で激しい違和感を生んでいるにちがいない。
冷えた外気をまともに通すレースの肩を両手で抱きながら、ハイヒールに目を落とした。
「自由を知りたくて……パーティー会場から抜け出してきたの」
「……へえ、本物のお姫様だ」
「といっても中学の卒業記念パーティーだけど。私はおまけみたいなものだから」

