でも不思議と怖くはなかった。ひさしぶりにひとりになって、気持ちが高揚しているのかもしれない。
と思っていたら、急に低い声が聞こえた。
顔を上げると、ニット帽をかぶった驚くほど体の大きな外国人男性が、私の正面に立ってなにやらしゃべっている。英語みたいだけど、ネイティブの発音なうえにとても早口で全然聞き取れない。
「え、あの」
心臓が早くなっていく。男性は困ったような怒ったような顔で、なおもまくしたてる。
学校で習ったはずの英文が頭の中でばらばらに崩れていく。体が委縮して、ただ音だけが耳をすり抜けていく。
そして外国人男性は急に私の腕を掴んだ。厚みのある手の感触に、ぞわっと怖気が走る。
「っ」

