ふいに名前を呼ばれて、どきりと胸が鳴った。鷹野社長は切り分けた肉を口に運び、ゆっくりと咀嚼してすべてを飲みこんでから、静かに視線をよこす。
「家と会社の往復で、どこにでかけるにも運転手付きの車で移動することを義務付けられている。事実上の監視だな。そんな環境にいたら、たしかに自分で選んだ友人と気軽に買い物に行くこともできない」
微かに同情するような口調で言ってから、付け足した。
「君の伯父君は、ずいぶん心配性のようだ」
そこではじめて彼は笑った。
くしゃっと崩れる屈託のない笑みが私の胸をひっかく。心の奥にいきなり飛び込んできて、大切に閉じ込めてある箱のふたを、強引に開けようとする。
あわてて目を伏せた。

