通常のアシスタント業務をこなしながら、社長から言い渡されたプロジェクトの企画書を作成していると、時間はあっというまに過ぎる。

 さっき始業したばかりだと思っていたら、パソコン画面の隅に出る時計はすでに十一時半を差していた。モニターに近づけすぎていた目を離して、小さく息をつく。

 細かい文字やデータに埋め尽くされていた頭を一旦リセットして気分転換をしようと思っていたら、タイミングよく内線電話が鳴った。

「はい、開発企画、桜井です」

「戸上です。桜井さん、社長がお呼びです」

 電話のディスプレイに秘書室の内線番号が表示されていたから、ある程度予想はしていたけれど、有能な社長秘書の声を聞くとやっぱり緊張する。