促されるようにして、私はリビングの壁に沿って緩い曲線状に取り付けられた階段をのぼり、飛鳥井さんを二階のテラスに案内した。
晴れていればバルコニーのテーブルで高台からの夜景を眺めながらお茶ができるけれど、今日はあいにくの雨模様だ。
室内に置かれたアームチェアを彼に勧め、自分も腰を下ろしながら、窓ガラス越しに濡れた夜の光を見て小さくため息をついた。
「宗一さんにも困ったものだね」
私の心を察したようにつぶやいて、飛鳥井さんは穏やかな目を窓に向ける。
「婚約者といったって会うのは二回目だ。戸惑うのも無理はないよ」
「すみません……私、前のときのことを、ほとんど覚えていなくて」

