ニコニコと無害そうな笑顔を浮かべているその人は、小売業で成り上がってきたホワイトグループなんて足元にも及ばない、旧財閥の流れを組む飛鳥グループの、とりわけ『飛鳥銀行』と『飛鳥重工業』とともに御三家と呼ばれる飛鳥商事の、御曹司なのだ。
「飛鳥井くんは、父君のもとで執行役員の職に就いているんだ。次期取締役だな」
伯父に水を向けられて、彼は困ったような笑みを返す。
「まだまだ若輩者ですよ」
飛鳥井さんの如才ない返答に、伯父は上機嫌そうに笑った。
以津子さんが運んでくれたお茶を断り、代わりにアルコールを要求すると、伯父は笑いじわに埋もれた目を微かに開き、有無を言わさぬ声を放つ。
「せっかくだから、ふたりでゆっくり話してきなさい」

