「こんばんは、飛鳥井迅(じん)です。久しぶり……と言った方がいいのかな」
「迅……?」
思わず声が漏れた。センターテーブルを挟んだ向こうで、彼は不思議そうに目をまたたく。
「どうかしましたか」
「……いえ」
頭に浮かびかけた社長室での出来事を、伯父の太い笑い声が遮る。
「どうだ、十五年ぶりに会う婚約者は」
ソファにゆったりと肘をかけ、年齢のわりには肌艶のいい顔をにたりと歪めて、伯父はいたずらをしかけた子どものような、いや、それよりももっと私欲が絡んだような目で、私と彼を交互に見ていた。
どうと言われても……小さい頃に一度会っただけの人なんて、よく覚えていない。

