車は、幕末に名を遺した藩邸史跡のある庭園前を通り、ヨーロッパ各国の大使館が点在する地域の坂を上ったところでゆっくりと停車した。
私の父、白鳥真治(しんじ)が二十年前に建てた三階建ての家は、地下二階までを含めた床面積が七百五十平米を超えるけれど、白い壁に囲まれていて中の様子はまったくわからない。
設計の段階で伯父が口を出して作らせたというその外壁は優に二メートルを超え、帰宅するたびに私を冷たく見下ろした。
まるで刑務所だわ。
黒田さんがリモコンでガレージのシャッターを開け、五台分の駐車スペースがある一角へと車を滑り込ませていく。アイアン門扉の電子錠に指先をかざしてロックを解除してから、私は波瑠とともにポーチを抜けて玄関に入った。

