本当は私もみんなのように電車で通勤したかったけれど、社会人として外の世界で働くためには、様々な条件を飲まなければならなかったのだ。
車内に目を戻すと、フードを取った波瑠の髪が目に入ってぎょっとした。
「ちょっと波瑠、その髪どうしたの!」
シートベルトに押さえつけられながら身を乗り出す私を、彼はきょとんとした顔で振り返る。
マッシュヘアとでもいうのだろうか、厚めにカットされた前髪もたくさんのピアスが空いた耳にかかる後ろ髪も、すべてグレーがかった薄ピンクになっていた。
「あ……そうか。珠里に染められたんだった」
自分の前髪をつまむようにして目線を上げ、波瑠はこともなげにつぶやく。

