「聞いてなかったというか……」
「なんだよ、さては俺に見とれてたな?」
冗談めかして言うと、いつも冷静な彼女が珍しくむくれた顔を見せた。
「ど……どうした」
「……モテるからって、浮気しないでくださいね……」
すねたように言われて、火薬庫が爆破されたような衝撃に襲われた。
浮気なんかするわけないだろうがっ!
心の中で叫んで、自分を落ち着けるように額を押さえる。深く息を吸い込んで、頭をもたげた欲望を必死に押し込めた。
ダメだ、落ち着け。さっきの今でまた始めたら俺は猿になってしまう。
「あー……そうだ、仕事のことなんだけどな」
気を紛らわせるように話を変えて、迅はコーヒーを口に運んだ。
「真珠が望むなら、仕事、続けてもいいんだぞ。一応まだ休職扱いになってるし……宗一さんにも、真珠のやりたいようにやらせるってことで話はついてる」

