「いらっしゃいませ」
品のいい笑みを浮かべたスタッフに荷物を預け、迅は真珠をともない男性係員に案内されるまま店内を見て回った。
「素敵ね」
橙色に近い『藤黄(とうおう)色』のソファを見て真珠がつぶやく。
一流ホテルのラウンジにも似たその場所は、イタリアが誇るモダン家具メーカーのショールームだった。
「新居の家具はここで揃えようと思ってるんだけど、どう思う?」
「え……」
「君とふたりで住む家のことなんだから、ふたりで決めないとな」
迅を見上げる真珠の表情が少しずつ崩れていって、彼はとっさに彼女を引き寄せた。小さな後頭部を掴んで自分の胸に押しつけ、男性係員に笑みを向ける。
「ちょっと失礼」

