「あ。ありがとう」
ほっとした顔で膝に広げている彼女の方へ身を乗り出し、迅は手にしていたイヤーマフを真珠の小さな頭に嵌めた。
グレーのファーに耳を隠された彼女がひどく可憐に見えて、思わず顔を近づける。外気で冷たくなっていた小さな唇にキスをすると、真珠はびっくりしたように固まった。
「さてと。出発しますよ、お姫様」
小さく笑ってからサングラスを掛け直し、迅はアクセルを踏み込んで休日の都心通りを走り出した。
平日は渋滞が絶えない大通りも、休みの日だと交通の流れは驚くほどスムーズだ。往来の少ない通りの駐車スペースに車を停め、ルーフを閉じてロックをかける。
ぼんやりした顔で立っている彼女の手を取って指を絡めただけで、婚約者はまたしても赤くなった。

