地下の機械式駐車場から出庫したメルセデスのロードスターでマンション前に乗りつけると、寒そうにコートの襟を立てて待っていた真珠がきょとんと目をまたたいた。そのまま歩き去ろうとする横顔に、迅は慌ててサングラスを取る。
「おい、俺だよ」
「あ、迅」
「なに素通りしてんだ」
「……すみません」
謝りながら、彼女はレザージャケットを着てニット帽とドライビンググローブを嵌めた迅を上目遣いに見ている。どうやら自分の婚約者だと気づかなかったらしい。
普段冷静に物事を考えているように見えて、真珠はときどき驚くほど抜けている。そこが可愛いところでもあるのだが、あまり外では隙を見せないでほしかった。

