F・スコット・フィッツジェラルドの本をめくって、迅はアルファベットの羅列に目を落とした。アメリカ文学を代表するその作品には、自らの力で富と名声を得た男の恋と葛藤が描かれている。
先祖から代々譲り受けた財産と、自分で築き上げた財産。同じ資産なのに、そこにはただの金銭的価値以上の大きな隔たりが存在する。
迅が生まれた世界には、自分の力だけではどうすることもできない『家柄』というものがあることを、彼はちゃんとわかっていた。それは得ようとしたところで得られず、捨てようとしたところで捨てられない、やっかいな代物だ。
ふと、皮肉っぽく笑っていた雅臣の顔を思い出す。
『それを飛鳥井の御曹司が言うのかよ』
ページをめくりながら、迅は鼻を鳴らした。

