みどり先輩の後ろ姿がすっかり消え去ると、エントランスアプローチの陰から黒い大きな傘を差した人影が現れた。パーカーにジーンズというラフな格好で、かぶったフードの隙間から大きな目をのぞかせる。
「真珠。おかえり」
差しかけられた傘に入り、彼が足を進める方向へと一緒に歩きだす。傘の下で並び立つと、となりにある肩の位置がいつもより高くて思わず振り返った。
「波瑠(はる)、背が伸びた?」
「いいや、ちっとも。百七十から微動だにしない」
女の子みたいにきれいな顔はいつもより唇の色づきがよく、もともと長いまつ毛がいっそう濃くなっていた。薄く化粧でもしているのかもしれない。
「今日は厚底だから」

