政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています


「そう? じゃあありがたくお借りするわ。今度なにかおごらせてね」

 ふわりと微笑むと、彼女は躊躇することなく傘を差して雨に濡れたエントランスアプローチを歩き出した。外灯がかすかに照らすだけの暗い空の下に、明るく咲いたライトピンクの傘が吸い込まれていく。

 みどり先輩は決して詮索しない。

 相手が男性でも女性でも、それが遠慮であれ建前であれ、結構です、と言われればそれ以上踏み込むことはなく、そうですかと引き下がる。

 人によってはあっさりしたそんな振る舞いを寂しく感じたり、もっと突っ込んで聞いてほしいと思ったりするらしいけれど、私は彼女のそういうさっぱりしたところがとても好きだった。