マンションのときと同じ、彼の匂いを感じると、どんなに乱れていた気持ちも不思議と落ち着いていく。まるで温かくて柔らかな雲にふわふわと包まれているみたいに心地いい。
「失うことの恐ろしさがわかったぶん、大切にするはずだ」
優しい声は私に思い出させた。自分がどういう気持ちでパールをしまったジュエリーボックスを眺めていたかを。
「あきらめなきゃって、思って……」
あのときの胸の痛みを思い出して、また涙が浮かんでくる。私を抱きしめる迅の手にぎゅっと力がこもった。
「たくさん……泣いたわ」
頭に顔をうずめるようにして、彼は強く私を抱きしめる。
「うん。すまなかった」
「嫌いになれたらいいのにって、何度も思った」

