隅に待機していた正装姿の男性が、座敷の下座、つまりは珠里と飛鳥井さんの中間に進みでる。仲人である伯父の代わりに司会進行を務める料亭のスタッフらしく、はっきりとした滑舌で話しはじめた。
「結納のお取次ぎをさせて頂きます百行亭の月岡と申します。本日はお日柄もよく、ご両家様には誠におめでとうございます。ただいまより、白鳥真珠様と飛鳥井迅様との結納の儀をとりおこなわせていただきます」
頭が真っ白だった。
飛鳥井迅――?
だって、私の目の前にいるこの人は、鷹野迅社長でしょう!?
叫びたいのに、できなかった。
儀式は私の気持ちなんてお構いなしに粛々と進行していく。自分が言うべき口上もすべて吹き飛んで、私はただただ、正面に座っている彼を見つめた。

