「で、社長の話ってなんだったの、桜井ちゃん」
奥の壁一面に貼られた鏡で身だしなみを整えながら、みどり先輩が口を開いた。
「わざわざ呼び出すってなかなかの事態じゃない?」
ボタンの前に立ったまま、私は顔がこわばらないようにどうにかこらえる。
「新しいプロジェクトの話でした」
「え? 社長がわざわざ?」
驚いた顔をする先輩に、微笑みかける。
「社長直下に発足させるみたいです」
ぽーんと音がして、エレベーターが停止する。
守衛に守られたゲートを抜けロビーを突っ切ってエントランスを出ると、外は真っ暗だった。足元からひんやりした空気がのぼってくる。

