政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています


 戸上さんの言葉は、社長室の一角で過ごした短い時間を思い出させた。三ヶ月にも及ばないほんのわずかな間に、本当にいろいろなことが起きた気がする。

 気持ちが大きく揺れたし、仕事だって私なりに一生懸命に取り組んだ。すべてが中途半端なままではあるけれど……。

 小さくため息をついていると、となりに立ったままの彼がぽつりと言葉を落とした。

「驚きましたか?」

「え……?」

 七対三にびしりと分けた髪の毛はこの時間でも崩れておらず、整髪料で顔まで一緒に固めたみたいに表情すら動かさない。黒いフレームメガネの奥で、切れ長の目はいつだって真実を語る。

「年が明けてから、管理職が率先して部下の状況を把握し、定時での帰宅を促すようになりました」