「お母さん……波瑠のこんな格好、珠里が見たら怒るんじゃない?」

「なに言ってるのよ。いつも奇抜な格好させられて可哀想じゃない。波瑠くんだって、たまには気の抜けた格好をしたいわよねえ」

 中性的な顔に無害な笑みを浮かべてうなずく波瑠は、私よりもよっぽど世間の渡り方を熟知していると思う。

 そんな彼に、母はすまなさそうに眉尻を下げた。

「本当に、いつも珠里が変なことを頼んでごめんなさいね。あの子ったら、どうしてあんなふうに周囲を巻き込むのかしら……。親の顔が見てみたいわ」

 あなたですよ、とこの場にいる全員が心の中で唱えたに違いなかった。