「ありがとうございます」と言って、波瑠はさっそく長袖シャツの上からかぶった。いつものくせなのか、ショーモデルのようにくるりと回ってTシャツのバックプリントを披露する。

「きゃ、やっぱりかっこいい! 波瑠くんは本当になんでも似合うわね」

 普段から口数の少ない波瑠は、「どうも」と小さく頭を下げてスツールに座り直した。

 珠里のコーディネートがなくてもハイセンスな格好をしている波瑠が、お土産のTシャツを着てお茶をすすっている姿はとてもシュールだ。

 いつもセットアップスーツで仕事をしている母のファッションセンスは、正直に言って、あまり優れているとはいえない。