音が鳴って、エレベーターが扉を開く。来た時と同じ専用フロアに降り立つと、飛鳥井さんは私をエスコートするように腰に触れた。

 大きな手の感触に、私の胸はやっぱり反応を示さない。

 クリスマス・イヴの街並みは、どこもかしこもイルミネーションだらけで、目がちかちかした。同じ人工的な光なら、雪が積もったような静けさを湛えていた、あの通りの景色の方がずっと美しかった。

 思い出した瞬間、精悍な顔がよみがえって、胸が締めつけられた。

「真珠ちゃん、大丈夫? ちょっと酔った?」

「いえ、平気です」

 このあとどこに行くのかは聞いていないけれど、きっとふたりだけになれる場所に行くのだろうと思った。そのまま、クリスマスの夜を一緒に過ごすことになっても不思議ではない。