わけがわからなくて、ただ頬が燃える。 「し、失礼します!」 焦った顔を見られたくなくて、私は社長室を飛び出した。 敷き詰められた絨毯が私の乱雑な足音を吸い込む。廊下は来た時と同じ静謐さを保ったまま、異物を吐き出すようにセキュリティドアの外に私を押し出した。 エレベーターホールで立ち止まり、ガラス越しに遠くなった社長室を振り返ったけれど、両開きのドアは開かれる気配がなかった。 呼吸が乱れたまま、頭の中の混乱を収めるように、私はしばらくその場に佇んでいた。