まっさきに思い浮かんだのは鷹野社長の姿だった。前髪を後ろに流した精悍な顔、車内で組んでいた長い脚、威圧感たっぷりなのにどこか優しくて、力強く私を包み込んでくれた大きな体――。
炎のように燃え上がった気持ちを必死に抑えて、私は口にした。
「そう……ですか」
むしろよかったのかもしれないと思った。
あの人と顔を合わせたら、私はきっと冷静ではいられない。
年末に向けて社長は多忙を極めている。戸上さんとの打ち合わせを聞く限り、年内の彼のスケジュールは仕事納めの日まで空くことなく埋まっていた。だからきっと、彼とはこのまま顔を合わせずに、私はあの会社を去ることができる。
「結婚までにいろいろと準備が必要なんでしょ? 女性は大変だね」

