絞り出した声は、震えていた。
雨の音すら聞こえない部屋の中に、一瞬、沈黙がおりる。
それから、社長が驚いたように目を見開いた。
「なんだ、まだ気づいてなかったのか……お姫様?」
いたずらっぽく崩れた表情に、全身が震えた。
声を失っている私を見て、社長は不安そうに自身の頬を押さえる。
「俺、十年でそんなに老けたか……?」
彼を見つめたまま、私は動けなかった。
体ごとコンクリートで固められたみたいに、指先ひとつ動かせない。口からは空気が漏れるだけで、どう頑張っても声にならなかった。
ただ、胸が痛いくらい鳴っている。

