それはふたが開かれたままの真っ白なリングケースだった。けれど、そこに収められていたのは、指輪ではなく二粒の真珠。
足元からぶわりとなにかがこみ上げる。
「ああそれ。誕生日に渡しそびれてから、ずっとタイミングを逃してたんだ」
悪びれずに言う彼を、振り返る。
きょとんと私を見下ろす鷹野社長は、髪が下りているせいでいつもよりずっと幼く見えた。そのせいか精悍さが薄れて柔らかな空気が漂っている。
端正な顔をくしゃりと崩して、彼は私の髪をなでた。
「ちょうどいい。持って帰れ。ていうか、なんで今日はブレスレットをつけてないんだよ」
言葉が出なかった。

