あさっての方向を向いた靴先が気になって、なんとなく並べ直した。それから頭にかぶせられていたコートを手に抱え、辺りを見回す。
奥に延びる廊下は、床が黒色なのに対して壁は真っ白だ。シンプルだけど正反対の色調のせいかおしゃれな雰囲気で、どことなく漂う社長の匂いに微かに胸が騒ぐ。
心臓がおかしな音を立てそうになり、ぎゅっと目をつぶった。自分に言い聞かせるように、頭の中で繰り返す。
違う。ここには雨宿りに寄っただけ。
「ほら、これ使え」
足音が聞こえたのと同時、押し付けられるようにして渡されたのは、真っ白で肌触りのいいバスタオルだ。
「あ、いえ。このコートのおかげでそんなに濡れ」
顔を上げた瞬間、私は固まった。

