連れてこられたのは、世界中のあらゆる文化や美術品が集う美術館やハイブランドのショップ、有名企業が入ったオフィスビルに病院といった建物が集約された複合施設――に併設された高級マンションだった。
入り口をくぐると、黒を基調としたシックな空間にホテルのフロントのようなスペースがある。
雨水を散らすように駆け込んできた私たちを見て、ふたりの女性コンシェルジュが目を丸めていた。そんな彼女たちを無視し、社長は私を引っ張ったままエレベーターに乗りこむ。
狭まった視界の中、キーをかざして階数ボタンを押す広い背中を眺めた。光沢感のあるライトグレーのストライプスーツは、雨に濡れてまだら模様に色を変えている。

