冬の雨はとても冷たい。アルコールの熱が一気に醒め、周囲の冷気がぐっと強まった。
雨に打たれていく私を見下ろし、鷹野社長は自分のチェスターコートを脱いだ。きょとんとしているあいだに、頭からかぶせられる。
「かぶってろ。風邪をひく」
「え、でも社長は」
「走るぞ」
そう言って、彼は私の手を取り、通りを走り出した。もつれそうになりながらも、私は引っ張られるまま懸命に足を踏みだす。
「ど、どこに」
どこかの駅に向かうのだろうかと思っていたら、冷気に紛れて返された言葉は、思いがけないものだった。
「ここからなら、俺の家の方が近い」

