「すごい……ですね」
それは都会の一等地を横断する坂の道だった。
四百メートルにわたる圧巻のイルミネーションはここのところ冬の風物詩として定着していて、テレビかなにかで目にしたことはある。
だけど、家と会社を往復するだけの私は、実際に自分の目でこの景色を見たことはなかった。
「……海の底に、いるみたい」
沈黙したまま突き立っているビルに見下ろされるようにして、車のライトが海底を這うように光の通りを進んでいく。
「晴れてたら最高だったんだけどな」
私を振り返り、彼は静かに微笑んだ。その表情が少しだけ寂しそうなのは、イルミネーションの色合いのせいだろうか。

