政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています


 支配人と料理長、それからワインをセレクトしてくれたソムリエにあいさつをして店を出ると、冴えた空気に巻きつかれた。

 夜空は灰色に濁り、星も月も見えない。風は冷たいけれど、アルコールのせいか寒くはなかった。

「少し歩かないか」

 すぐにタクシーを捕まえるのだろうと思っていたら、彼は私の返事を待たずに歩き出した。細い通りを進んでいくチェスターコートの背中を慌てて追う。

 彼と並ぶようにして大通りに出た途端、私は声を失った。

 目に飛び込んできたのは、光の道だった。

 通りに沿って整然と並ぶ裸の街路樹が葉のかわりにまとっているのは、銀色に輝く雪の結晶めいた光。その先に、ひときわ目を引く朱色の鉄塔が夜空にそびえている。