苦手だ、と思った。
この人の目は苦手だ。
鷹野社長は、まばたきを忘れたようにまっすぐ私を見る。熱いような、冷たいような、感情の読めない視線を向けられると、胸の奥を掻きまわされている気分になる。
……落ち着かない。
「管理体制を見直すために、俺の直下にWLB推進室を置くことにした」
「WLB……ワークライフバランスですか?」
社長の目を見ないように視線をネクタイのあたりに固定すると、低い声がかすかに緩んだ。
「そうだ。社長として、手始めに社員の労働時間改善を図ろうと思ってね。国の指針もあるが、長時間労働は長期的に考えると経営リスクに繋がって、ひいては会社存続の危機にもなりかねない。君にはそのリーダーを任せたいと思っている」

