広い背中を見送るうちに、自然とため息がこぼれる。非日常の存在に思えていた婚約者が突然私の仕事場に現れたせいか、妙に緊張した。
それと同時に、飛鳥井さんの日常の顔も垣間見れた。前に会ったときは『僕』と言っていた彼も普段は『俺』という言葉を使うし、私の家に来たときよりもずっと砕けた顔で笑うらしい。
思っていたよりも親しみやすい人なのかもしれないと思う。だけど……。
これから結婚する相手だというのに、体に触られたり頬にキスをされたりしても、感情の揺れは少しも起こらなかった。
私、本当にあの人と結婚するのかな。
式の準備を自分でしていないせいか、現実感がまったくない。
でも、結納の日取りは決まったのか……。

