一瞬、言葉の意味を理解できなかった。結納、と口の中で繰り返した瞬間、心臓が激しい音を立てる。
「え……」
「年明けだってさ。その前に、一度俺とデートしない?」
彼の微笑みに、どう返せばいいかわからなかった。でも、答えるべき言葉は決まっている。
鷹野社長から感じる視線が、痛い。
彼からの誘いは拒み続けているけれど、婚約者である飛鳥井さんの誘いを断る理由は、ない。
「はい」
震えないようにどうにか声を出すと、婚約者はぱっと顔を輝かせた。
「それなら、クリスマスに食事しよう! 空けておいてね」
ひらひらと私に手を振って、ブラウンのスーツに身を包んだ御曹司は社長室から出ていった。

