長い脚を踏み出して入ってきたその人は、しゃれたブラウンのスリーピーススーツにポケットチーフを飾った、いかにも上流階級という雰囲気の背の高い人だった。
「え……」
私は声を失った。それは向こうも同じだったようで、部屋の真ん中で立ち止まり、大きな目をぱちくりさせている。
「あれ、真珠ちゃん? なんでここに……」
飛鳥商事の御曹司、私の婚約者である飛鳥井さんは、丸い目を私から鷹野社長に移すと、「ははあ、なるほど」と得心がいったように笑った。
「ジン、なかなか強引なことをするね」
ゆったりと歩を運んで近づいてくると、彼はエグゼクティブデスクに右手をついてからかうように社長を見下ろした。それから私の手を取って自分の方へ引き寄せる。

