「さすがにここ(社長室)で口説くつもりはないから、安心しろ」
「え……?」
疑いの目を向ける私に苦笑しながら、続ける。
「こんな密室で真珠に触ったら、さすがの俺も歯止めがきかなくなるかもしれないしな」
本気とも冗談ともつかない口調で言って、鷹野社長はいたずらっぽく笑った。
前髪をすべて後ろに流しているせいで、たっぷりの光を反射する瞳が、黒真珠みたいな深い色合いをしていることが見て取れる。その奥に愛しいものを見る柔らかさを見つけて、どきりと心臓が跳ねた。
「し、失礼します」
自分の席に戻ろうと踵を返しかけたときだった。
「おーい、ジン、頑張ってるー?」
突然社長室の扉が開いて、男性がひとり姿を現した。

