「はい……?」
席を立ち、毛足の長い絨毯の上をおそるおそる社長の方へ歩いていく。
三週間前に『あなたにあらがいます』と宣言して以来、彼の方でもなにかが吹っ切れたように公然と食事やデートに誘ってくるようになっていた。エレベーターで一緒になったときや、廊下ですれちがったときには、頭をなでたり肩に触れたりしてくる。
一応人目は気にしているようだけれど、私としては気が気じゃない。
彼に触られるだけで自分のものじゃなくなったみたいに体が反応するのに、誰が見てるともわからない会社で、しかも不意打ちのように迫ってこられたら、心臓がいくつあっても足りない。
身構えながら社長の傍らに立つと、彼は形よく生えそろった凛々しい眉を片方持ち上げた。

