「……桜井真珠、という名前なのか?」 ふいに目が合った。 ホールで見たときはわからなかったけれど、書類から顔を上げたその人は、鋭いというほどでもないのに、いきなり相手の心臓をわしづかみにするような、人の動きを止める瞳をもっていた。 「……はい。桜井です」 「ビジネスネームか」 私は黙ったままその人を見つめ返す。 鷹野迅社長。飛鳥商事から送り込まれてきた九月生まれの三十歳。実際に目の前にすると、就任挨拶のときには感じられなかった迫力に圧倒される。