「……はい」
静かに答えると、みどり先輩が目を剥いた。
「社長室って! 桜井ちゃん、何かやったの……?」
「いえ、処分を受けるようなことはなにもやってないと思いますけど……」
戸上さんの急かすような視線に気づき、私は先輩に頭を下げて急いで席を立った。
開発部がある二十階からエレベーターで重役フロアの二十二階まで上がり、フロアごとに設置されているセキュリティドアを抜けると、絨毯敷きの廊下がまっすぐ続いていた。
その一番奥まで歩き、戸上さんは床から天井まで高さがあるドアの前で立ち止まる。コンサートホールの会場にあるような両開きのそれをノックし、ドアの片側を押し開けた。

