だから会いたくないのに、実際に顔を合わせない日々が続くと、私の脳は勝手に彼の映像を再生して、記憶の定着を図るように何度も上書きしようとする。
疲れた顔で笑って、私の名前を呼んで、頬にキスを――。
だから、なにを考えているの私は。
頭に浮かび上がった映像を振り払い、私は急いで社長室をあとにした。
セキュリティドアを抜け、エレベーターのボタンを押す。なかなか上がってこないエレベーターを待ちながら、また社長のことを考えそうになってため息をついた。
私が考えるべきことは、ほかにあるはずだ。
ふいにあの人から料亭で言われた言葉を思い出した。
『よく知りもしない相手と結婚してもいいのか?』

