逃げるように車外へ飛び出し、夜空の下で振り返る。胸をぎゅっと押さえながら、信じられない気持ちで見ていると、
「おやすみ、真珠」
彼はふっと微笑んで、ドアを閉めた。
黒く艶を放つハイヤーが静かに走り出し、静かな夜の住宅街を去っていく。
鎖で足をつながれたみたいにその場に立ち尽くし、私は遠ざかっていくテールランプをじっと見送った。
心臓が壊れたように響いて、ほかにはなにも聞こえない。
だから背後から現れたなにかに突然足を触られた瞬間、飛び上がるほど驚いた。ぎょっとして見ると、足元で胴輪をした真っ白な愛犬が尾をばたつかせている。
「アレク……!」

