食事を終えると二十二時近かった。
来たときと同じようにハイヤーに私を押し込んで、社長は住所を確かめもせずにヨーロッパ各国の大使館が集まる地域へ向かうようにと、運転手に指示を出す。
後部座席に社長と並んで座りながら、窓の外を流れる景色を見ていると、ふいに右手に大きな手がかぶさった。
突然のぬくもりに驚いて顔を上げる。社長はドアに頬杖をついて窓の外を眺めていた。
目線を合わせることなく、彼の長い指はゆっくりと私の指に絡んでいく。
心拍がゆっくり上昇していき、胸の奥でトクトクと血液が押し出される音がした。
彼が無言のままだから、私もなにも言えない。
そう自分に言い訳をして、私の手を優しく包み込んでくれる彼の体温を静かに感じる。

