エレベーターで二十階のフロアに戻ると、案の定、みどり先輩は叫んだ。
「決めた! 私、鷹野社長と付き合うわ!」
女性従業員の誰もが一度は夢見るかもしれないことを、想像するだけで終わらせるであろう夢物語を、はっきり口にするみどり先輩はやっぱりすごい。
自己主張することにためらいがなく、しかも留学経験があって英語まで堪能な彼女は、シャイな日本人男性よりも情熱的な外国人男性のほうが合うのじゃないかと思うのだけれど、先輩本人はなぜか日本人に強くこだわっている。
「落ち着け中越。あの社長がお前なんかを相手にするわけないだろ」
安西先輩から冷めた調子でたしなめられても、みどり先輩はめげない。椅子に腰かけながら、となりをじろりと睨み上げた。
「なによ、わからないじゃない! 仕事を通じて私の魅力を存分に伝えられればきっとイチコロよ!」

