パソコンの電源をオフにして資料を整理し、机の上を片づけてから立ち上がろとしたとき、ドアが開いてすらりと背の高い男性が姿を現した。目が合って、一瞬、どきりとする。
「なんだ、まだいたのか」
「はい。おつかれさまです」
鷹野社長は一人がけのボックスソファにカバンを置くと、小さく息をついた。社長のデスクまでは戻らず、ボックスソファの四角い背もたれに腰をあずける。
ひとりきりだった空間に突然細い糸が張り巡らされたように男性の気配がただよって、うまく息を吸えなくなった。急いで立ち上がり、私はカバンを拾い上げる。
「お、お先に失礼します」
目を合わせないように社長の傍らを通り過ぎようとしたとき、低い声が落ちた。

