大勢の視線を一身に浴びながら少しも憶することなく言葉を紡いでいく彼は、五大商社の執行役員という肩書きから想像できる人物像とは、確かにかけ離れていた。
すらりとした長身に小さな頭。遠目でもその顔立ちが整っていることが見て取れる。
従業員千五百人のトップに立つには若すぎるその人は、まるでラグジュアリーブランドのスーツをお披露目するためにランウェイに立ったファッションショーモデルのようだ。
気がつくとホール内がざわめきはじめている。みどり先輩と同じように、女子社員たちが社長の容姿を目の当たりにして色めき立っていた。
無理もない。あんな人がこれから自分たちの会社の社長になるなんて、普通の女性社員だったら冷静ではいられないと思う。

