となりでそわそわと落ち着かない様子だったみどり先輩が目の色を変えたのは、ひとりの男性が壇上に上がった瞬間だった。
仕立てのよさそうなスーツに身を包んだその人が、マイクを前に口を開く。
「ご紹介に与りました鷹野(たかの)です。このたび取締役会決議を受け、ホワイトモール株式会社の代表取締役社長に就任いたしました」
「ちょっと! 若いじゃない!」
社長の挨拶にかぶさるように小声で言って、みどり先輩が高速で肘鉄をしてくる。
「先輩、あの、落ち着いて」
声を潜めて注意する私をまるっきり無視して、先輩は興奮気味にこちらを振り返る。
「しかもめちゃめちゃ男前だわ!」
私は壇上でスピーチを続けている新社長に目を戻した。

