「ただいま」

“おかえりなさい。お父さんがお話があるって”

母さんが出迎えてくれて、そう言った。

俺は不思議に思いながらも、父さんが待つリビングに向かった。

「なに?父さん」

黙ったまま、封筒を渡された。

「なにこれ?」

父さんは、ずっと俯いていた顔を上げた。

その顔は、悲しそうだった。

「……?」

“耳、聴こえるようになるかもしれない”

「え?」

“だけど、手術なんだ。それに、完全に聴こえなくなるかもしれない”