「……っ!」

なぜかこの言葉だけは、はっきり聴こえた。

しっかりと、初めて聴いた母さんの声だった。

それからはなにを言われても、母さんの言葉を思い出していた。

だから辛くても、頑張れたんだ。

「母さん!!!」

姉さんの声が、家中に響き渡った。

駆けつけてみると、母さんが倒れていた。

「か、母さん!!!」

『母さん見てて』

微かに俺の耳に届いた。

俺は頷き、姉さんは救急車を呼びに行った。